流動性の理解が企業価値向上に不可欠な理由とは?

企業価値は様々な要素で構成されており、そのひとつに「流動性」があります。流動性は、機関投資家の投資判断において最重要な要素の一つですが、一般的にはあまり認識されていません。流動性とは何でしょうか?そして、なぜそれが投資家にとって重要な要素なのでしょうか。

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流動性とは

流動性とは、資産がどれだけ迅速かつ容易に現金化できるかという性質を指します。一般的に流動性が高い市場は投資家にとって魅力的であり、取引のしやすさ、価格の公正性、そして市場の透明性を提供します。例えば、資産クラスによって流動性のレベルは異なります。

では、なぜ流動性が高いことが企業価値の向上につながるのでしょうか?端的に言えば、流動性が高い企業の株式や資産は、投資家にとって取引がしやすく、短期間で売買が可能なため、リスクが低いと評価されることが多いからです。また、流動性が高い市場では、価格の透明性が高く、公正に評価されます。一方で、流動性が低いことは、投資家にとって投資のハードルとなります。そのハードルを取り除き、投資を容易にすることが、結果として企業価値を高める重要な要素となるのです。

流動性の資産クラス別の例

まず、流動性は資産クラスによって大きく異なります。以下に、流動性が高い資産クラスから低い資産クラスまでの具体例です。

高流動性

株式:AppleやMicrosoftのような大企業の株式 

国債:米国債や日本国債などの主要国の国債 

外国為替:主要通貨ペア(USD/JPY, EUR/USD など)

中程度の流動性

株式:中規模企業の株式 

社債:投資適格の大企業が発行する社債 

上場投資信託(ETF):主要な株価指数に連動するETF

低流動性

株式:新興企業や時価総額の小さい企業や浮動株比率の低い企業の株式 

私募債:非上場企業が発行する社債 

不動産:商業用不動産や高額住宅 

プライベートエクイティ投資:未公開企業への投資

流動性を一般的な例えを使って説明すると

もう少しわかりやすく、一般的な例えをつかうと、以下のように考えることができます。

高流動性

例:現金や電子マネー 

特徴:いつでもすぐに使える。価値が変わることはほとんどない。

低流動性

例:中古車や不動産

特徴:売却には時間がかかる。適正価格で売れるまでに数週間から数ヶ月かかることも。

極めて低い流動性

例:アート作品や骨董品 • 特殊な派生商品や仕組み商品 

特徴:価値は高いかもしれないが、買い手を見つけるのが難しく、売却に何ヶ月も何年もかかることがある。

どうして流動性が機関投資家にとって重要要素なのか

機関投資家にとって、流動性は投資戦略の実行可能性や全体的なパフォーマンスに直結する極めて重要な要素です。そのため、多くのファンドは、特殊なケースを除き、一定以上の流動性がある株式を主な投資対象とする傾向があります。以下、その主な理由です。

1.投資出来る額の規模の問題

 大規模なファンド(例:数兆円規模の海外ファンド)にとって、流動性の低い小型株や新興企業株式は実質的な投資対象になりにくい現実があります。

例えば、1000億円の運用資産を持つファンドが、時価総額50億円の企業に1%(5000万円)投資したとしても、ファンド全体への影響は0.05%に過ぎません。仮に株価が2倍になっても、ファンド全体のリターンは0.05%にしかなりません。

2.ポジション構築の難しさ

流動性の低い株式では、大規模な買い付けが株価を大きく押し上げてしまい、想定した価格での投資が困難になります。

例えば、1日の平均取引量が1000万円の株式に対して、5億円の投資を行おうとすると、単純計算で50営業日(約2ヶ月半)かかることになります。実際には、大量の買い注文により株価が上昇し、さらに長期間かかる可能性があります。

3.出口戦略の難しさ

投資を回収する際も、流動性の低さが大きな障害となります。

例えば、保有株式の時価総額が100億円あるポジションを解消しようとした場合、1日の出来高が5000万円程度の株式では、理論上200日(約10ヶ月)かかることになります。実際には、大量の売り注文により株価が下落し、さらに長期間かかったり、大幅な損失が発生したりする可能性があります。

4.リスク管理の困難さ

流動性の低い株式は、市場環境の急変時に迅速なポジション調整が困難です。

例えば、 リーマンショックのような急激な市場下落時で市場そのものに流動性がなくなった時、流動性の低い株式を大量に保有していると、売却が困難となり、大きな損失を被る可能性が高まります。

総じて、極めて高いリターンが期待できる場合、例えば数年で10倍の成長が見込める新興企業への投資や、M&Aや業務提携を視野に入れた長期的な戦略投資などを除き、多くのファンドは一定以上の流動性がある株式を投資対象にする傾向があります。

次回はどうしたら自社の株の流動性を高めることが出来るかについて解説をします。

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